Skip to content

メールサーバについて

本ページでは、espar 導入にあたって留意すべき場合があるメールサーバについて解説します。

espar の導入がメール受信に影響を与えるケース

espar では原則、DNSで Webサーバの IPアドレスを espar 公開側サーバIPアドレス(下図のa.b.c.d)に変更するだけで、他に影響を与えることなく機能するようになっています。

transition.png

しかし、espar導入によるDNSレコード変更が、メールに影響を与える場合があります

以下の条件全てに当てはまるドメインで espar を導入する場合は、espar 導入後にメールトラブルが発生しないよう事前の準備が必要です。(該当する場合は導入前にお知らせします)

  • (1) wwwなしのドメイン名をそのままWebサイトのドメインとして使っている
  • (2) wwwなしのドメイン名がそのままメールサーバとして指定されている
  • (3) 同ドメインでメールを普段から使用している

分かり易いように example.com というドメイン使っている企業を具体例として示します。espar の導入を検討しているドメインに置き換えて、以下3つの質問にご回答下さい。

  • (1) ウェブサイトのURLは http://example.com/https://example.com/ でしょうか?
  • (2) DNSでのメールサーバ指定は example.com でしょうか? (MXToolBox等で確認可能)
  • (3) info@example.com などのメールアドレスを普段から使っているでしょうか?

esparの導入を検討しているドメインでこの3つの回答が全てYESの場合、esparの導入に伴うDNS設定変更の直後から、example.com ドメイン配下の全てのメールが届かなくなります。以下に、その技術的理由と対策を順に記します。

メールが届かなくなる理由

上記の(1)〜(3)がYESの場合、DNSの設定は以下の通りになっている筈です。(IPやドメインは例です)

DNSレコードタイプDNSレコード意味
Aexample.com10.0.1.100example.com は 10.0.1.100 のサーバを指し示す
(つまり https://example.com/ のWebサイトは 10.0.1.100 にある)
MX-10 example.comexample.com ドメインのメールサーバは example.com である
(つまり上記Aレコードにより 10.0.1.100 のサーバ)

これは example.com という表記が、Webサイトでもありメールサーバでもあるとインターネット全体に宣言している状態です。

この状態で、espar 導入のために「DNSのAレコードでWebサーバを指すIPアドレスを a.b.c.d に変更する」を実施するとどうなるでしょうか。以下のように変わります。

DNSレコードタイプDNSレコード意味
Aexample.coma.b.c.dexample.com は a.b.c.d のサーバを指し示す
(つまり https://example.com/ のWebサイトは a.b.c.d にある。すなわち、esparの公開サーバを指す)
MX-10 example.comexample.com ドメインのメールサーバは example.com である
(つまり上記Aレコードにより a.b.c.d の espar 公開サーバを指すことになる)

WebサーバのIPアドレスを変更しただけのつもりが、メールサーバの設定まで巻き込まれることが分かります。これはメールサーバを意味するMXレコードが、IPアドレスではなくホスト名で指定する必要があるからです。(DNSの仕様)

結果、example.comドメインのメールサーバは example.com が指し示す a.b.c.d のサーバであるとインターネット全体に宣言することになります。他社のメールサーバからは、example.com ドメインのメールサーバは a.b.c.d であると認識されます。

結果、誰かが example.com 宛のメールを送ろうとすると以下のように振る舞うため、example.com ドメイン宛てのメール送信障害が発生します。

  1. ドメイン example.com 以外のあるドメイン(例えば顧客)のメールサーバが example.com 宛のメールを送ろうとする。
  2. ドメイン example.com のMXレコードからメールサーバは example.com であると認識する。
  3. メールサーバ example.com の IPアドレス は a.b.c.d であると認識する。
  4. example.com 宛のメール(例えばinfo@example.com) を a.b.c.d のサーバに送信しようとする。
  5. a.b.c.d のサーバは espar の公開サーバでありメールサーバではない。よってメール送信はエラーとなり example.com 宛のメールはいつまでも送れない。

以上が、espar 導入に伴うDNS設定変更がメールに影響を与える理由です。wwwなしドメイン名をそのままWebサーバにもメールサーバにも使っているドメインでこの問題が発生します。以下のようにメールサーバとWebサーバを明確に分けている場合は該当しません。

メールサーバWebサーバ
例1example.comwww.example.com
例2mail.example.comwww.example.com

対策

対策は以下の2種類となります。分かり易いように example.com を具体例として示します。

方法1 : メールサーバを移行

STEP説明
1example.com のメールサーバを別のメールサーバに移行する
(今後も同ドメインのメールを使わない)
2移行完了または利用停止の周知する
3esparを導入する

方法2 : WebサイトのURL変更を周知

本ページで解説した問題の原因は、メールサーバとWebサイトのドメインが一致してしまっていることにありました。方法2は、Webサイト側を変更することで対策するものです。

STEP説明
1現Webサーバで example.com のhttp/https応答を全て www.example.com にリダイレクトする
2esparを導入する
3WebサイトURLは今後wwwなしではなくwwwありとして周知する

豆知識 : wwwなしをWebサイトURLとして使うことが推奨されない理由

本ページで紹介した問題は、espar に限った課題ではなく、CDNやWAFなどDNS設定変更を伴うサービスを使用する場合に必ず直面します。

ドメイン名でもあり、メールサーバ名でもあり、Webサーバ名でもある…という全く異なる3つの役割を1つの文字列(例ではexample.com)に持たせた状態は、将来の事業発展の足かせになる可能性が高いです。

これはDNS取得サービス付きレンタルサーバの多くが、Webサーバとメールサーバがドメイン名と同じになる設定をデフォルトにして提供していることに起因しています。本来、レンタルサーバ業者は以下のようなDNS設定を前提に顧客にサーバを提供することが望ましいと言えます。

種類ホスト名設定値役割
Awww.example.com10.0.1.100WebサーバのIPアドレス情報
Amail.example.com10.0.1.100メールサーバのIPアドレス情報
MX10 mail.example.comメールサーバのホスト名を指定

このように Webサーバとメールサーバのホスト名が異なるように設定するほうが、役割が明示されて分かり易いだけでなく、将来メールやWebの機能を別サーバに一部委譲または拡張する時に設定を変更しやすくなります。